v【激熱展開】『アドレス変えました』これだけの本文。俺「君は誰?」…『私は私だよ?』何気なく連絡を続けると…

 

知らないアドレスからメールが来た。

 

『アドレス変えました』

 

これだけの本文。

 

名前も書かれていない電子の文章。

 

僕「これは……誰からだろう?」

 

携帯片手に、首を傾げた夜だった。

 

アドレスからは、男性か女性か判断が出来ない。

 

僕「……まあいいか」

 

連絡が来るんだから知っている人間なんだろう。

 

僕「明日の会社で聞けばいい……か」

 

携帯の電源を切って、そのまま眠りについた。

 

知らない人からのメール……ただそれだけだ。

 

『……あ、僕ちゃん』

 

『よう僕。サッカーやろうぜ!』

 

ここは……小学校?

 

いや、何だか景色が違う。

 

緑のフェンスの向こうには、紅葉が舞っていて……

 

そのフェンス寄りかかる形でサッカーゴールが置かれている。

 

僕「ああ、これは夢なんだ」

 

周りでは、小学校時代の友人が笑っている。

 

笑いながら……僕が合流するのを待っていた。

 

ピピピピ ピピピピ ピピピピ…

 

僕「……」

 

携帯電話からのアラーム音で、

 

僕は気だるく目を覚ました。

 

僕「……昔の夢を見るなんて。懐かしいなあ」

 

地元を離れた今では、昔の友人に会う事はない。

 

ちょっとだけセンチメンタルになってしまった。

 

僕「……っと、もうこんな時間か」

 

しかし数秒もすれば僕の頭は現実……電車に乗る時間に引き戻されて行く。

 

僕「じゃあ、いってきます」

 

誰もいない部屋に挨拶をして、

 

僕は朝日の中を歩き出した。

 

見知らぬメールの事なんて、

 

もう僕の頭の中にはなかった。

 

僕「おはようございます、っと」

 

ニ十分程電車に乗って、

 

僕はいつものタイムカードを押す。

 

僕「……」

 

あとはただ黙々と仕事をこなすだけだ。

 

お昼休みまでは四時間程、

 

集中していれば短いものだった。

 

後輩「先輩~、お昼行かないんですか~?」

 

僕「ん……ああ、もうそんな時間?」

 

後輩「もう、先輩は真面目すぎますよ~」

 

甘えたような声で、小さくクスッと笑う彼女。

 

大学時代からの後輩で同じ会社に入社した……それだけの関係。

 

後輩「ささっ、一緒にご飯行きましょう?」

 

グイッと僕を引っ張る、白く細い腕。

 

短い髪と小さな体がとても可愛らしい、そんな子だ。

 

後輩「さ、何食べます~?」

 

僕「……刺身定食」

 

後輩「おとといもそれでしたね。昨日はカツ丼で、それの繰り返し」

 

僕「いいんだよ、飽きないんだから」

 

後輩「そんなんじゃあ栄養偏っちゃいますよ? も、もしよかったら私がお……」

 

店員娘「いらっしゃいませ。また来て下さったんですね」

 

言葉を遮るように、お店の子が僕たちのテーブルまでやって来た。

 

後輩「あ……ぅ」

 

僕「やあ、こんちわ。また来たんだよ」

 

店員娘「ふふ~、最近毎日ですね。仲良くお二人で」

 

若くて愛想のいい彼女の笑顔。

 

職場ではけっして出会う事のできないこの顔を見るのが、僕は好きだった。

 

僕「ははっ」

 

後輩「むぅ~……」

 

店員娘「ふふ、では何にしますか? 今日はお刺身ですか?」

 

メニューのローテーションも、彼女にはお見通しだった。

 

後輩「……むぅ」

 

うどんをすすりながら、後輩は終始不機嫌だった。

 

後輩「先輩って、よくここ来ますよね?」

 

後輩「あの子の事狙ってるんですか~?」

 

後輩「いや、まあ可愛らしい人だとは思いますけどぉ……」

 

 

醤油を濃いめにかけても、

 

お刺身が分かりづらい。

 

僕(悪い子じゃないんだけどなあ……)

 

ははっと苦笑いしながらご飯を食べるのがいつもの僕らだった。

 

店員娘「……ふふっ」

 

そしてそれを遠くから見ている彼女も。

 

後輩「じゃあ先輩、午後も頑張りましょうね~」

 

ヒラヒラと手を振って去っていく彼女。